園長ブログ
ブラックホール
2019-04-13
ブラックホール撮影成功のビッグニュースが世界中を駆け巡りました。
リングの中心の黒い影がブラックホール本体ですか。。。ならすごい写真です。もっともこのブラックホールのサイズはかなり巨大で、地球の直径の300万倍だそうですが、距離がなにぶん5500万光年(1光年は9,460,528,400,000km)も離れていますので、すさまじい拡大率&解像度です。これも地球サイズの疑似望遠鏡システムの勝利ですね。
園長は中学生の時、初めてアインシュタインの相対性理論についての本を読みました。その時、理論上でのみ存在が予言されているナゾの天体として、ブラックホールは紹介されていました。それが、自分が生きているうちに写真で見られるとは!
初めて相対論を読んだこの当時、時間や空間が伸び縮みしたり湾曲したりするとの記述を読んで、そのものすごく刺激的な内容に、非常に強く興味をそそられました。ただ、この理論が人類の役に立つのは、少なくとも何百年も先の遠い遠い未来だと思っていました。まさにSFの世界みたいな未来でのみ役立つと。
ところが今現在、アインシュタインの相対性理論は私たちの生活に密着し、日々役に立っています。
それは、、、GPS。
GPSは地球を周回する複数のGPS衛星から、時刻信号を受信し、受信器の時計との時刻差から距離を求め(時刻差×光の速度でGPS衛星との距離がわかる)位置情報を知るシステムです。
ところが、GPS衛星は地上から遠く離れているため、地上より地球の重力の影響が弱い。アインシュタインの一般相対性理論により、地上では地球の重力の影響により時間の経過速度が(無重力の宇宙空間より)遅くなりますから、それと比較してGPS衛星の時計は地上の時計より早く進む。さらに、GPS衛星はハイスピードで地球の周りを回っているので、これまたアインシュタインの特殊相対性理論の効果により、地上より時間の経過速度が遅くなる効果が発生する。
一般相対性理論と特殊相対性理論の効果は、このケースでは真逆に働いています。具体的には、一般相対性理論の効果すなわち重力差による時間進行速度の差は、1日あたり、0.000000000527秒。特殊相対性理論の効果すなわちGPS衛星の運動速度による時間進行速度の差は、1日あたり、-0.000000000082秒。したがって、トータル0.000000000527秒-0.000000000082秒=0.000000000445秒。
だから、GPS衛星の時計は、地上の時計より1日あたり0.000000000445秒遅く進むように設定された上で衛星に搭載され、ロケットで打ち上げられています。無事、宇宙空間の軌道上に達したGPS衛星の時計は、先ほどの一般相対性理論と特殊相対性理論の効果により、地上の時計との0.000000000445秒分の差が打ち消され、見事に地球上の全時計と、全GPS衛星の時計が同期(時刻が完全一致)され、正確な時刻情報が発信・受信され、かくして正確な位置情報がわかる。と、こういうわけです。
ちなみにもし、この1日あたり0.000000000445秒を無視した場合、位置情報は1日あたり13cmと35mmずれます。この誤差は蓄積されていきますので1年で48.72m。衛星の耐用年数である5年で243.7mずれます。これではナビとして使い物になりませんね。